拝啓 TU.Y 先生
私は今憧れのベニスに居ます。学生時代先生の御蔭で建築の面白さを学びました。就職してから三年位して研究室と先生の企画によるヨーロッパの旅は更にいい勉強になりなした。給料も少なくて金額的に無理だったのですが4番目の兄が全額貸してくれ(二年で返済)、長兄が好きな一眼レフを買えと餞別をくれ実現したものでした。エジプト、ピラッミドから始まりギリシャ、パルテノン、ニケ神殿、イタリア各地を廻りベニスを経由しスイス、フランス、北欧と古代から近代建築を廻る旅は私にとって建築を愛し、頑張るだけの存在にさせて頂いた貴重な時間でした。十年ほど前にも10日程ベニスで運河をスッケチする旅をして以来のベニスです。今度は2週間ほどこちらに居ますので、先生に会える恒例のOB会には出れません、その分こちらでサンマルコ、小さな広場や運河のアノニマスな空間の醍醐味を絵にしてみたいと思っています。サンマルコ広場の空間は絵には出来ませんが空間を構成している街の建物(行政館)、サンマルコ寺院から小広場に面して美しいドゥカーレ宮殿、鐘楼の変化にはいつも惚れ惚れします。CANAL GRANDEへの空間の流れと淀み、逆に大運河に面して輝く美しく毅然とした姿に心を躍らせています。旅人に成りきってしまいます。映画「旅情」や「ベニスに死す」のドラマが想い出され、一層気分は高まります。今回はパリで先生に言われたように「エッフェル塔に登って街をつかめ!」オノボリサンと思われようと是非、鐘楼に登りベニスを鳥観してみます。一人で居ると、かつて言われたこと!いいアドバイス!今ここに居る自分を導いてくれた先生や兄弟に感謝できる素直な自分になれることに気がつきました。帰ったら仙台や長岡に酒を飲みに行きたいと思います。勿論柿生には一番に!!!お身体をご自愛ください。敬具
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